宮城県仙台市青葉区愛子の内科・脳神経内科

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認知症

認知症(物忘れがひどくなってきた)

1. 認知症って何?

認知症

 認知症とは、一度正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を言い、それが意識障害のないときにみられる、と定義されます。
 この言い方は少し難しいので、言い換えると、意識はしっかりいつもどおりだけれども、今まで出来ていたことができなくなったり、今まで覚えられていたことが出来なくなった状態を認知症と言います。認知症は85歳以上の4人に1人がかかる身近な病気で、誰もがかかる可能性があります。

 ここで気になるのは「年齢による正常な物忘れ」なのか、「認知症」なのかです。

「年齢による正常な物忘れ」の特徴は

① 体験の一部分を忘れる
② ヒントを与えられると思い出せる
③ 時間や場所などの検討がつく
④ 日常生活に支障はない
⑤ 物忘れに対して自覚がある

といった特徴があります。これらに当てはまる方は年齢による物忘れの可能性が高いです。

一方「認知症」の特徴は

① 体験全体を忘れる
② 新しい出来事を記憶できない
③ ヒントを与えられても思い出せない
④ 時間や場所などの見当がつかない
⑤ 日常生活に支障がある
⑥ 物忘れに対して自覚が乏しい

といった特徴があります。思い当たる症状がある場合は神経内科医のいる医療機関の受診をお勧めします。

2. 認知症と似ている病気

 認知症と症状が似ている病気に「うつ病」「せん妄」といった病気があります。「うつ病」は年齢を重ねてから発病する場合もあり(老年期うつ病と言います)、抑うつ症状といって喜びの感情や活気が低下し、認知症との区別が難しいことがあります。

 「せん妄」は時間帯や1日の中での物忘れが変動し、急激に発症するのが特徴です。せん妄の原因にはあらゆる病気が隠れている可能性があるため、医師の診察や検査が必要になります。飲んでいるお薬が「せん妄」の原因となることもあります。また、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害や脳腫瘍などが隠れていることがあるので、脳の画像検査が必要になることもあります。

3. 認知症の種類

 認知症は「根本的な治療が困難な認知症」「予防や治療が可能な認知症」に分けられます。

<根本的な治療が困難な認知症>

アルツハイマー型認知症

アミロイドβというタンパクが脳に蓄積して、神経細胞が減少し、脳が痩せていく病気です。日付や曜日が分からないといった症状(見当識障害)や少し前のことが思い出せない(遅延再生障害)といった特徴があります。症状は比較的緩やかに進行します。認知症全体の60%程度を占める代表的な疾患です。

レビー小体型認知症

レビー小体というタンパクが脳に蓄積する病気です。実際に存在しないものや人物が見えるという幻覚(幻視)、人が違う人に見えるといった症状や、動作がゆっくりになり転びやすい(パーキンソン症状)といった症状が見られます。日によって症状の変動が大きいという特徴があります。

前頭側頭型認知症

前頭葉と側頭葉(脳の前の方と横の方)の萎縮が徐々に進行する病気です。同じ行動を繰り返したり、自分勝手な行動をとったり、場にそぐわない反社会的な行動をとったりします。一方で引きこもりがちになったり、言葉が出なくなるなどの症状が出ることもあります。65歳未満で発症することが多い病気です。

<予防や治療が可能な認知症>

脳血管性認知症

脳梗塞や脳出血などの脳卒中が原因で起こる認知症です。症状の出にくい隠れ脳梗塞が原因となる事があります。動脈硬化や脳卒中の原因の治療にて悪化を防げる可能性があります。

正常圧水頭症

脳を循環している水(髄液)が何らかの原因で脳に溜まってしまい、脳が圧迫されて起こる病気です。認知症および尿失禁や歩行障害が症状として前面に出てきます。シャント手術といって髄液を外に排出する治療で改善する方もいます。

慢性硬膜下血腫

頭をぶつけた後等に頭蓋骨と脳の間に徐々に血の塊ができる病気です。頭をぶつけてから3週間から3ヶ月程度で症状が現れてくることが多く、ぶつけた事に気が付かない(忘れてしまっている)方も多く見られます。手術で改善が見込めます。

甲状腺機能低下症

体の代謝を調節する甲状腺ホルモンの分泌量が低下して、体の活動力が低下する病気です。記憶障害や活気の低下、体のむくみ、寒がりになったといった症状が見られます。 甲状腺ホルモンの補充で改善が見込めます。当院では物忘れで受診された患者さんには必ず甲状腺ホルモンの検査を行なっています。

4. 認知症の治療は?

認知症

 薬物療法(飲み薬による治療)と非薬物療法に分けられます。認知症を治す飲み薬はまだ開発されていませんが、飲み薬の治療によって認知症の進行を遅らせたり、困った症状(BPSDと言います)を緩和して本人の不安を減らしたり、ご家族の介護の負担を減らしたりすることができます。

 また、非薬物療法としては、ウォーキングなどの軽い運動や家族との交流、書き取りドリルや囲碁、将棋、麻雀などのゲームや音楽や絵画などの芸術に触れることも脳の活性化に繋がり、BPSDの改善が見られることも多くあります。

 

以上認知症に関して簡単に書かせて頂きました。ご心配なことがありましたらいつでもご相談ください。

岩崎晶夫(岩崎医院 院長)

参考文献:認知症疾患診療ガイドライン2017,日本神経学会
認知症「いっしがいいね」を支えるガイドブック,第一三共株式会社
リンク:日本神経学会